「教員のメンタルが辛い」「もう無理かもしれない」――
夜、スマホでそう検索しながら、このページにたどり着いたかもしれません。
この記事では、名著『嫌われる勇気』にもとづくアドラー心理学の考え方を、教室というリアルな現場に落とし込みながら、教員人生の歩み方を一緒に考えていきます。
読み終わる頃には、「私はダメな先生だ」ではなく、
「こうやって自分とクラスを守りながら、教師を続けていけばいいんだ」と感じられることをゴールにしています。
名著『嫌われる勇気』アドラー心理学にみる教員人生の歩み方
教員のメンタルが辛いと感じているあなたへ
25歳、勤続3年目の智子先生。
授業が終わり、学級だよりを書き終えたのは夜の8時。職員室にはもう数人しか残っていません。
「また今日も、あの子にきつく言いすぎたな……」
「クラスもまとまらないし、私ってやっぱり向いてないのかな」
帰宅しても仕事のことが頭から離れず、枕元には『嫌われる勇気』が置きっぱなし。
「嫌われる勇気なんて、とても持てないよ」と思いながらも、どこかに“答え”を求めてページをめくります。
この記事は、そんな智子先生と同じように、ギリギリのところで踏ん張っている若手の先生に向けて書いています。
※学級経営や生徒指導の「土台」から整理したい方は、こちらの記事もおすすめです。
・学級経営が崩れそうな担任へ|保護者対応・生徒指導がラクになる“問いを渡す”指導法
・どんな生徒も見捨てない担任へ|学級経営を立て直す「承認×期待」生徒指導メソッド
SECTION 1 現状を知る
教員のメンタルが辛いのは「あなただけじゃない」【まずは安心してほしい】
まず最初に、はっきり伝えたいことがあります。
教員のメンタルが辛いのは、あなた一人の問題ではありません。
それは、あなたの性格が弱いからでも、努力が足りないからでもないのです。
教員のメンタルが辛くなる典型パターン
教員のメンタルが辛くなる典型パターン
多くの若手教員が、次のような流れで追い込まれていきます。
- 毎日トラブル対応に追われて、授業づくりの時間が取れない
- 指導がうまくいかないと、「自分が悪い」と全部抱え込んでしまう
- 家に帰っても仕事のことを考え続けて、眠りが浅くなる
- 体調も崩れ、休日も「仕事を考えると憂うつ」で休まらない
これは、あなたが特別ダメだから起こっているのではなく、「教員という仕事の構造上、誰でもハマりやすいパターン」です。
「向いてない」と検索してしまう心理
「向いてない」と検索してしまう心理
夜中にスマホで「教員 向いてない」「教師 辞めたい」と検索してしまうのは、心が限界に近づいているサインです。
人は、本当に限界を超えてしまうと、検索する気力すらなくなります。
だからこそ、この記事にたどり着いたあなたは、まだ「どうにかしたい」と思っている証拠でもあります。
アドラー心理学がくれる“責めなくていい理由”
アドラー心理学がくれる“責めなくていい理由”
『嫌われる勇気』で語られるアドラー心理学は、「いま、ここからどう生きるか」に焦点を当てます。
過去の失敗や、これまでの自分を責め続けることには意味がない、と考えるのです。
教員の世界では、「ちゃんとできて当たり前」「ミスは許されない」という空気が強くなりがちです。
しかしアドラーは、完璧である必要はないし、できない自分を責めるより、「これからどう動くか」にエネルギーを使おうと教えてくれます。
「そうは言っても、責任はあるし、反省しなきゃいけないでしょ?」という声もあるでしょう。
もちろん、指導の振り返りや改善は必要です。ただし、自分を潰してしまうレベルの自己否定は、仕事のためにも子どものためにもなりません。
まずは、「辛いと感じている自分」を否定しないこと。
ここから、教員人生の立て直しが始まります。
この章のまとめ
- 教員のメンタルが辛いのは、構造上誰でも陥りやすい
- 「向いてない」と検索できているのは、まだ立て直したい証拠
- アドラー心理学は「過去より、これからどう生きるか」に焦点を当てる
SECTION 2 原因を理解する
なぜ教員のメンタルはこんなに辛いのか?3つの背景を整理する
「辛いのは自分のせいだ」と思い込んでしまうと、どんどん視野が狭くなります。
ここでは、教員のメンタルが追い込まれやすい背景を3つに整理してみましょう。
「評価されにくい仕事」をしているという現実
「評価されにくい仕事」をしているという現実
教員の仕事は、成果が数字で見えにくい仕事です。
テストの点数や進学実績だけでは測れない「成長」や「関係性」に、膨大なエネルギーを使っています。
にもかかわらず、ニュースで取り上げられるのは不祥事やトラブルばかり。
「できて当たり前」「失敗したら叩かれる」という構造の中で働いているのですから、メンタルが削られて当然です。
境界線があいまいな人間関係(生徒・保護者・同僚)
境界線があいまいな人間関係(生徒・保護者・同僚)
教員は一日中、人と関わり続ける仕事です。
生徒、保護者、同僚、管理職…。それぞれとの距離感を保つだけでも、相当なエネルギーを使います。
とくに若手の先生ほど、「嫌われたくないから、全部に応えようとしてしまう」傾向が強くなります。
しかし、すべてに応えようとするほど、自分の時間も心も削られていきます。
「いい先生像」に縛られすぎていないか
「いい先生像」に縛られすぎていないか
「生徒に好かれる先生」「保護者に信頼される先生」「同僚に迷惑をかけない先生」…。
気づけば、完璧な“いい先生像”を自分に課していませんか?
アドラー心理学では、他者からの評価を基準に生きることを「他者の人生を生きている」と表現します。
評価をゼロにすることはできませんが、「全部を満たさなければならない」と思い込むほど、メンタルは追い込まれていきます。
コラム:ベテランの先生の本音
あるベテランの先生が、こんなことを話してくれました。
「若い頃は『みんなに好かれよう』として、本当にしんどかった。でも、嫌われる覚悟を決めたわけじゃない。
“自分の軸”を決めたら、結果的に『分かってくれる人』との関係が濃くなったんだよね」と。
まさにアドラーが語る“共同体感覚”の一つの形だと感じました。
「でも、若手の自分がそんなふうに割り切っていいのかな?」と思うかもしれません。
もちろん、仕事を放棄していいという話ではありません。ただ、「全部に100点で応える前提」から一度降りてみることは、メンタルを守るうえでとても大切です。
この章のまとめ
- 教員は「評価されにくく、責められやすい」構造の中で働いている
- 人間関係の境界線があいまいで、全方位に応えようとして疲弊しやすい
- 完璧な「いい先生像」に縛られるほど、メンタルは削られていく
SECTION 3 考え方の土台
『嫌われる勇気』に学ぶ“課題の分離”で教員の心を軽くする
ここからは、『嫌われる勇気』で有名になったアドラー心理学の考え方を、教員のメンタルに引き寄せて見ていきます。
キーワードは、「課題の分離」です。
アドラー心理学の核心「課題の分離」とは
アドラー心理学の核心「課題の分離」とは
「課題の分離」とは、一言でいえば「それは誰の問題(課題)なのかを切り分けて考える」ことです。
例えば、生徒が宿題をやってこないとき。
それは「生徒自身の課題」です。教師の課題は、やらなかった事実に対してどのように働きかけるかを考えること。
「なんでやらないの?私の指導が悪いから?」と、生徒の課題まで自分のものとして背負い込まないのがポイントです。
教室で使える「それは誰の課題?」の考え方
教室で使える「それは誰の課題?」の考え方
実際の教室では、こんなふうに整理できます。
- 授業に集中しない生徒 → 自分の学びをどうするかは「生徒の課題」
- 授業づくりや学級経営 → 学習環境をどう整えるかは「教師の課題」
- 保護者がどう思うか → 思うかどうかは「保護者の課題」
もちろん、「じゃあ放っておこう」ではありません。
ただ、「相手の感情や行動」を変える責任までは、自分の課題にしないということです。
「嫌われる勇気」は“雑に突き放す勇気”ではない
「嫌われる勇気」は“雑に突き放す勇気”ではない
『嫌われる勇気』というタイトルだけを聞くと、「相手を突き放してもいい」というメッセージに見えるかもしれません。
しかし本質は、「相手の人生を生きるのではなく、自分の人生を生きる勇気」です。
教員に置き換えるなら、
「全員に好かれる先生」を目指すのではなく、「自分の信じる教育を、丁寧に実践し続ける先生」であろうとすること。
その過程で、合わない人から嫌われることがあっても、それは「相手の課題」でもある――そんな捉え方です。
「でも、嫌われたら仕事しづらくなりませんか?」という不安も当然あります。
だからこそ、雑に「嫌われてもいい」ではなく、「自分の軸を持ちつつ、対話はあくまで丁寧に」が大切です。
課題の分離は、責任逃れではありません。
背負いすぎて潰れそうな自分を守るための、境界線の引き方なのです。
この章のまとめ
- 「課題の分離」は、誰の問題かを切り分ける考え方
- 相手の行動・感情まで自分の課題にすると、メンタルが潰れてしまう
- 「嫌われる勇気」は、雑な突き放しではなく「自分の軸で生きる勇気」
SECTION 4 教室での実践
教室で今日からできるアドラー流コミュニケーション実践例
考え方を知っても、「実際の教室でどう使うか」が見えないと、意味がありません。
ここでは、アドラー心理学をベースにした、教室での具体的な声かけを紹介します。
叱る前にできる「事実と感情を分けて伝える」
叱る前にできる「事実と感情を分けて伝える」
イラッとしたときほど、「事実」と「自分の感情」を分けて言葉にすることが大切です。
例)授業中に私語が止まらないとき
- NG:「いい加減にしなさい!なんで毎回そうなの!」
- OK:「今、授業中に私語が続いているね。(事実)先生は、みんなに大事なところを伝えたいから困っているよ。(感情)」
事実と感情を分けて伝えることで、人格を否定せずに行動だけを指摘できます。
先生自身も、感情に飲み込まれにくくなり、メンタルの消耗が少なくなります。
「ほめる」よりも効くアドラー流の“勇気づけ”
「ほめる」よりも効くアドラー流の“勇気づけ”
アドラーは、「ほめる」よりも「勇気づけ(encouragement)」を重視します。
ほめることは、どうしても「上から下へ」の評価になりやすいからです。
たとえば、こんな言い方の違いがあります。
- ほめる:「えらいね!」「さすが!」(評価メイン)
- 勇気づけ:「そのノートのとり方、前よりも見やすくなっているね」「あきらめずに最後までやりきったんだね」(変化と努力に注目)
勇気づけは、「できた/できない」ではなく「前の自分からの成長」に光を当てる関わりです。
これは、先生自身にもそのまま向けられる視線でもあります。
問題児との関わりを変える3つのフレーズ
問題児との関わりを変える3つのフレーズ
毎日のようにトラブルを起こす生徒との関わりは、メンタルを大きく消耗させます。
そんなときに使える、アドラー的な3つのフレーズを紹介します。
- 「どうしたらよかったと思う?」(相手に考えさせる)
- 「先生は、あなたがこうなってくれたらうれしい」(期待を伝える)
- 「失敗はしたけど、ここは前よりよくなっているね」(部分的な成長を拾う)
すぐに劇的な変化は起きないかもしれません。
それでも、先生が「見ようとしているポイント」が変わることで、関係性は少しずつ変化していきます。
この章のまとめ
- 叱るときは「事実」と「感情」を分けて伝えることで、人格否定を避けられる
- 「勇気づけ」は結果ではなくプロセスと成長に光を当てる関わり
- 問題児との関わりは、フレーズを変えることで先生の視点も変わっていく
智子先生のつぶやき
「正直、そんな余裕ない…」と思う日もあるかもしれません。
それでも、一日のうちのたった一場面だけでも、ことばを選んでみる。
その小さな一歩が、未来の自分のメンタルを守る投資になるはずです。
SECTION 5 辞めたい気持ちとの付き合い方
「教員を辞めたい」と思ったときの考え方と選択肢
メンタルが辛くなると、「もう辞めたい」という気持ちが頭をよぎります。
その感情を、「弱さ」や「逃げ」として否定する必要はありません。
「辞めたい」は心のSOSであって、弱さではない
「辞めたい」は心のSOSであって、弱さではない
「辞めたい」と思うのは、今の環境が自分の限界を超えつつあるサインです。
体が発する熱や痛みと同じで、「これ以上は危ないよ」と教えてくれているのです。
「続ける/辞める」を今すぐ決めなくていい理由
「続ける/辞める」を今すぐ決めなくていい理由
追い詰められているときほど、「続けるか、辞めるか」の二択で考えてしまいがちです。
ですが、アドラー的な視点に立つなら、「いま、ここからできる一歩」に焦点を当てることが大切です。
たとえば、次のような中間の選択肢があります。
- 信頼できる同僚・管理職・産業医に相談してみる
- 一時的に勤務形態を見直せないか打診する
- 専門家(カウンセラー・医療機関)に相談する
「辞める/辞めない」は、その次のステップで考えても遅くはありません。
メンタルを守るための現実的なセーフティネット
メンタルを守るための現実的なセーフティネット
メンタルが崩れてしまってからでは、立て直しに膨大なエネルギーが必要です。
そうなる前に、「自分の命と生活を守る仕組み」を整えておきましょう。
- 学校外の相談窓口やホットラインの情報をメモしておく
- 仕事以外の人間関係(友人・家族・コミュニティ)を大切にしておく
- 「最悪、こういう道もある」という転職・異動の選択肢を知っておく
これらは、「逃げの準備」ではありません。
自分の人生のハンドルを握り続けるための備えです。
この章のまとめ
- 「辞めたい」は弱さではなく、限界に近づいているサイン
- 二択ではなく、「いま、ここからできる一歩」に目を向ける
- セーフティネットを整えることは、人生のハンドルを握り続ける準備
SECTION 6 教員人生の設計図
メンタルを守りながら歩む“教員人生”の設計図
最後に、「教員として、どう生きていくか」という少し長いスパンの話をします。
ここまで読んだあなたは、すでに教員として真剣に向き合っている証拠です。
「仕事の自分」と「人生の自分」を分けて考える
「仕事の自分」と「人生の自分」を分けて考える
教員の仕事は、どうしても「自分の人格」と強く結びつきやすい仕事です。
だからこそ、意識的に「仕事の自分」と「人生の自分」を分けておくことが大切です。
・仕事の自分:授業・学級経営・生徒指導などの役割を担う自分
・人生の自分:家族や友人との時間、趣味、健康、将来の夢を持つ自分
仕事でうまくいかない日があっても、あなたの人生全体が否定されるわけではありません。
一人で抱えないための“共同体感覚”の育て方
一人で抱えないための“共同体感覚”の育て方
アドラー心理学では、人が幸せに生きるために欠かせない感覚として、「共同体感覚」を挙げます。
それは、「自分は誰かの役に立っている」「自分の居場所がある」と感じられる感覚です。
学校という場で共同体感覚を育てるためには、次のような行動が役立ちます。
- 一人でも「本音を話せる同僚」をつくる
- 学校外のコミュニティ(勉強会・オンラインサロン等)に参加する
- 「先生」ではない自分でいられる時間を意識的に確保する
小さな一歩を積み重ねるためのセルフケア習慣
小さな一歩を積み重ねるためのセルフケア習慣
メンタルを守るうえで、「特別なこと」をする必要はありません。
むしろ、地味で小さな習慣を続けることの方が大きな効果を生みます。
- 一日5分だけ、仕事のことを考えない「完全オフ時間」をつくる
- 「今日よかったことを1つだけ」メモする
- 週に1回だけでも、意識して体を動かす時間をつくる
この章のまとめ
- 仕事の自分と人生の自分を分けることで、メンタルを守りやすくなる
- 共同体感覚は「本音を話せる人」と「先生以外の自分の時間」から育つ
- 特別なことより、小さなセルフケア習慣を積み重ねることが大切
SECTION 7 次の一歩
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ここまで読んでくださったあなたは、きっと「それでも、子どもたちの前に立ち続けたい先生」だと思います。
最後に、この記事の内容を日々の実践に落とし込むためのサポートを紹介させてください。
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学級経営とメンタルケアを両立させたい先生へ
「クラスのことも、自分のメンタルのことも、そろそろ本気で整えたい」
そう感じたタイミングが、変化のスタートラインです。
「一人で抱え込まない先生」になるための次の一歩
「一人で抱え込まない先生」になるための次の一歩
メンタルが辛いとき、先生は「自分がもっと頑張れば…」と思いがちです。
でも、本当に必要なのは、「頑張り方を変える勇気」と「助けを求める勇気」かもしれません。
この記事や無料PDF、そして1on1が、あなたにとってその一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
最後に、アドラーの考え方にも通じる言葉をそっと置いておきます。
「勇気とは、恐れがあるまま踏み出す小さな一歩である」(心理学者・意訳)
完璧な先生である必要はありません。
「いま、ここから」の一歩を、一緒に積み重ねていきましょう。